ミ・サ・キ・コラムCOLUMN
歯の特徴
うさぎさんはワンちゃんやネコちゃんと違った特有の歯の構造と形態を有しています。
一番の違いは常生歯といい生涯歯を形成し伸び続ける事です。切歯(門歯)は1年で10~12cm、1週間に約2mm程度伸びています。
もうひとつは上顎切歯の裏に小さな小切歯があるのが特徴的でかつてうさぎさんは齧歯目に分類され、その特徴から重歯亜目と呼ばれていましたが現在ではウサギ目に分類されています。
うさぎさんの歯は野生で野草や樹の皮、根等固く高繊維の食物を摂取するのに適するようになっていて、
上顎および下顎切歯の咬合位置の関係や切歯のエナメル質が前面は非常に厚く後面はほとんどエナメル質が無い、このような歯の構造によって常に歯が尖るようになっています。
また、切歯と臼歯の間には犬歯は無く大きな隙間があいています。切歯でちぎった食べ物を臼歯ですり潰し顎の動きと共に1分間に120回程度咀嚼されます、歯は正確に配列していて上下対をなす歯がこすれる事によって咬合面が維持されどんどん伸びる歯を自分で削っているのです。
うさぎさんではよく歯ぎしりを聞く事があるとおもいますが、歯ぎしりをすることで歯の長さを調節する事もあるようです。
ちなみに歯の数もワンちゃんやネコちゃんとは違います、ワンちゃんの永久歯は42本、ネコちゃんは30本。
ではうさぎさんは?・・・28本です。
切歯
犬歯
前臼歯
後臼歯
上
切歯
2
犬歯
0
前臼歯
3
後臼歯
3
下
切歯
1
犬歯
0
前臼歯
2
後臼歯
3
総数
28本
乳歯はなんと胎生期、お腹の中にいる時から既に持っていいて本数は16本、切歯は出生前に吸収され、生後40日齢迄に永久歯に生え替わります。
歯の病気
このようにうさぎさんは犬や猫とは大きく違う歯の特徴がありますので歯の病気も少々違った病気にかかる事が多い動物です。
不正咬合
うさぎさんの飼い主さんが病院で良く聞く言葉として「不正咬合」と言う単語が出てくると思いますが
これは「咬み合わせ」が悪いと言う事ですが、先にも書いたようにうさぎさんは歯が伸び続ける動物なので咬み合わせが悪いと歯が削れない為いろいろな症状が出てきます。原因としては、先天的な要因と後天的な要因があります。
先天的要因
遺伝的な不正咬合。特にダッチ系やロップイヤー種で多くみられ下顎過長症等があります。
後天的要因
事故等による歯の破損による不正咬合。落下事故やケージかじり等で切歯が折れてしまう事もあります。
歯が摩耗しない食餌(パン・ソフトタイプのペレット・スナック等)による摩耗回数の減少。
症状
切歯・臼歯共に歯の過長や弯曲・捻転、エナメル質の棘状縁(歯の渕が尖って伸びてしまう)等が見られ正常な咬合が出来なくなる事により食欲不振・ヨダレ・体重減少・下痢等が見られる。
この不正咬合によりいろいろな病気を引き起こします。
切歯(門歯)の過長
切歯(門歯)の咬み合わせが悪いと、どんどん切歯(門歯)が伸びてきてしまいます、そうすると上手くグルーミングが出来ない為、被毛の状態が悪化し湿性皮膚炎を起こす事があります。
もちろん切歯がうまく咬み合っていないので野菜や牧草等を噛み切ることが出来なくなるため、野菜を食べなくなります。そして一番影響が大きいのは切歯のズレで臼歯までも咬み合わせが悪くなり歯の高さが変わってしまたり形が変わってきてしまう事です。
臼歯の過長
臼歯が口の中に伸びてきてしまうことでそれぞれの歯の高さが変わってきてしまいます、そうすると野菜等が上手くすり潰せず食欲不振や下痢などを起こします。咬み合わせの悪い状態が続くと臼歯の摩耗の仕方が悪くなり棘状縁が出来てしまい、舌や頬の粘膜を傷つけ潰瘍を作ってしまいます。
うさぎさんは歯が常に伸びる動物ですが、歯冠が口の中だけに伸びるのではなく、歯の根元(歯根)も内側に伸びていきます。つまり自分の顎の骨に向かって伸びてしまいます。
この歯根の過長が下顎で起こると下顎の骨を突き破ってしまいます、そこに感染が起こると歯槽骨膿瘍になったり、下顎の骨の炎症や歯が抜けてしまう事もあります。
上顎で過長が起こると鼻涙管を圧迫し、鼻涙管が炎症を起こし流涙がみられる。涙が出続ける事で眼のまわりの皮膚炎を起こします。また、眼の下の骨まで歯根が到達してしまうとそこに膿瘍を作ったり、眼球を押し上げてしまう事もあります。
これらの歯の病気の治療
切歯の過長は麻酔を用いずに歯科用の器具を使ってカット・調整することが出来ます。ただし臼歯の不正咬合も合わせて起こしている場合は全身麻酔による歯削りが必要となります。
臼歯の過長は勿論全身麻酔による歯削りや抜歯が必要になります。
それぞれの症状に合わせた治療が必要なりますので獣医師と相談の上治療を進めていきます。
うさぎさんは歯が常に伸びる動物です、その特徴ゆえに起きる歯の病気がほとんどです。
「歯が正しく削れる生活」を送る事によりこれら歯の病気を起こさずに生活していける可能性は格段に高くなるということです。
では「歯が正しく削れる生活」とは・・・?
うさぎさんは私達人間と生活する事により柔らかい物を食べるようになり歯が摩耗せず伸びてしまい歯の病気を起こしてしまうのです。野生のうさぎさんは固い樹の皮や根をかじったり、野草等線維が多く私達が想像するよりはるかに固い物を食べています。
固く線維の多い物を食べる事により歯が摩耗していくのです。
私達はうさぎさんの食べ物にはとても気を使ってあげなければなりません、固めの牧草や野菜中心を心がけてあげる事で予防する事が出来るのです。
固い物を齧らせる為に固いカジリ木はお勧めしません、切歯が折れたりすることがあるので注意しましょう!
うさぎさんの歯の事で迷ったことがあればいつでもご相談下さい。